「完璧じゃなくていい」お母さんと赤ちゃんに寄り添う訪問看護
上島さん
助産師

週3日の訪問看護で、主にお母さんと赤ちゃんのケアを担当している助産師の上島さん。病院勤務から訪問看護への転職で見つけた、新しい看護のかたちについてお話を伺いました。
ーー現在の担当業務について教えてください。
週4日の訪問看護で、お母さんと赤ちゃんの訪問を主に担当しています。
ーーどんな気持ちで訪問に伺っていますか?
大事にしているのは、「赤ちゃんと一緒に、お母さんも育っていけるように」そっとお手伝いすること。完璧じゃなくて大丈夫なんです。SNSやまわりの声に振り回されるより、「私はどうしたい?」という気持ちを大事にしてほしいと思っています。
「やってみたい」と思ったことがあれば、まずはチャレンジを応援します。「やっぱり難しいかも」と感じたときは、一緒に試行錯誤していきましょう。子育てって、こだわり出すと終わりがないので、ちょっと肩の力を抜くお手伝いができたらいいなと思っています。
訪問中に「なんか楽しかったな」と感じてもらえる時間がひとつでもあったら嬉しいです。
否定せず、ずっと寄り添うこと
ーー印象に残っているご家庭とのエピソードはありますか?
あるお母さんとの出会いが、私の看護観を大きく育ててくれました。シングルマザーで摂食障害を抱えながら、精一杯育児をされていた方です。
当時、心も体も限界に近く、「少し休んで」と思う気持ちもありましたが、ご本人は「自分の手で育てたい」と強く願っていました。その気持ちに寄り添い、決して否定せず、「そう思うんだね」とただただ受け止め続けました。
もちろん、心配なことがあれば「ここが気になるなあ」と、そっと伝える。でも「心配だけど、やってみたいよね」と並走する姿勢は崩さず、対処法を一緒に考えながら寄り添いました。
結果、少しずつ元気を取り戻され、お子さんを乳児院に預けるという選択も「自分で納得して決めた」と話してくださいました。いまは、引き取りにむけて、ご本人や家族の関係も良い方向にすすんでいます。
社会的な正解を押しつけるのではなく、本人が納得できる形で進めるようにそっと支える大切さ。そんな訪問看護の魅力を、改めて実感しました。
訪問看護だからできること

ーー病院勤務と比べて、訪問看護の良さはどんなところですか?
なんといっても、「その人の人生」に深く関われることです。入院中の限られた時間では見えにくい部分、たとえばその人の過去の背景や、日常のちょっとした癖やこだわりまで、まるごと受け止めることができます。
「お母さん」や「女性」という役割だけでなく、ひとりの人としての変化や成長をそばで見守れるのが、訪問看護のいちばんの魅力です。
ーー働き方としてはいかがですか?
とても柔軟で働きやすいです。直行直帰ができるので、自分でスケジュールを組みやすく、記録の時間も調整できます。訪問は朝9時からなので、朝のうちに家事をしたり、夕食の準備もできるようになりました。
ーー職場の雰囲気は?
みんな心に余裕があるのが「おとなり」のいいところです。時間に追われず、一人ひとりに丁寧に関われます。
訪問中はひとりでも、何かあればすぐにチャットで相談できるので、「ひとりだけど、ひとりじゃない」感覚があり、心強いです。
ーーお休みの日はどんなふうに過ごしていますか?
平日休みを活かして、子どもたちと一人ずつ「デート」するのが楽しみです。娘とはカフェでおしゃべり、息子とは近くの川沿いをのんびりお散歩。
夏は家の前の川を「うちのプール」と呼んで、家族で浮き輪を持って遊びます。自然の中でのびのび過ごす時間が、私にとってのリフレッシュになっています。
未来へつながる関わりを

ーーこれから挑戦したいことはありますか?
妊娠中の方への支援をもっと深めていきたいです。不安が出やすい妊娠初期から、訪問看護の存在を知ってもらえたらいいなと思っています。
また、指示書の期間が終わって会えなくなるのはやっぱり寂しいので、「その後どうしてる?」と気軽に会える場があってもいいなあと。ちょっとした“同窓会”みたいな場所ですね(笑)。
ーープレコンセプションケアへの関心もあると伺いました。
はい。京都府ではプレコンセプションケア(1)を推進する全国初の条例ができて、少しずつ広がってきています。妊娠・出産に関わらず、若い世代が自分自身の身体や心を大切にするための知識を持てるって、とても大切なことです。
助産師って「出産しないと出会えない職業」になりがちですが、「どんな仕事をしている人なのか」をもっと身近に感じてもらえたら嬉しいです。
不登校や親子関係の悩み、性的なトラウマなど、若い世代のしんどさにも、将来的には関われたらと思っています。
(1)将来赤ちゃんを持つかどうかに関係なく、10代以降の人が「食事・運動・禁煙 / 節度ある飲酒・病気の治療・こころの相談」などを妊娠前から行い、自分と将来の赤ちゃんの健康リスクを減らすための総合的なケアのこと。
ーー最後に、これから訪問看護を始める方へメッセージをお願いします。
頑張りすぎずに、ぼちぼち楽しんでいきましょう。完璧を求めず、利用者さまとのちょうどいい距離感を見つけられるように過ごすのがいいと思います。
この仕事は、やりすぎずにいろんなことのバランスを取って、真ん中くらいでできる仕事です。一人での行動が多いですが、みんなと相談でき、ゆっくり人に寄り添いたい方には向いている仕事だと思います。
時間が柔軟なためやりたいことができる仕事でもあり、そういった働き方がしたい方にはぴったりだと思います。